言葉はリズムである。
読むときに、口に出さなくても言葉が音に変わり、自然と抑揚がついて響く。
文章を書きながら、自分の頭の中にも同じことが起こっている。
その音が、同じ音階の繰り返しにならないように、言葉を置き換えることがしばしばある。
人の名前の呼び方を、何通りも用意して場面が逼迫したり、感情的になったりしたときにはそれにあった呼び方に変えていく。
あたかも伴奏を変調させるように。
論文ならば、言葉を正確に伝えるために言い換えをしないことが多い。
しかし、物語は流が大事だから言葉の響き、読者の心情の変化を作者が読み取って変化させていく。
同じ言葉を繰り返すと冗長になり、ときには他人を攻撃しているように聞こえる。
そういう場面なら、意図的に使うこともあるだろう。
「アサーション」という言葉もある。
同じ内容を指していても、言い換えによって印象が良くなる。