奈津子は両手のひらを開いて眺めていた。
「なぜ私だけ ───」
かわいいメイド服にあこがれてアルバイトを始めた。
流行りの「メイドカフェ」で働き始めたら、足をマッサージしろだの、良い香りのローションを塗れだのと言い始める。
「私、ウエイトレスですけど」
バイトリーダーに言ったところ、
「それくらい、サービスの内だよ。
嫌な顔しないでちょうだい」
さも当たり前という顔で言うのだ。
週末に友だちに誘われて参加した合コンで、仕事の話になった。
「カフェのウエイトレスをしてます」
ちょっとぶりっ子気味に言ったら、
「ええっ、そうなのか。
もしかしてヒラヒラの制服とか。
メイド喫茶だったりして」
言うんじゃなかった。
「そんなんじゃないです」
適当に、ごまかしている自分が悲しかった……