VR空間には、当然ながら|塵《ちり》一つない。
誰もゴミを捨てないのは、捨てても地面に保持されないためである。
「この世にはなぜゴミがあるのだろう ───」
唐突な問いは、普段清掃スタッフをしているせいだった。
ゴミは不要物である。
プログラミングするときに、ゴミを表現すること自体も不要である。
その不要物をメシの種にする自分は、バーチャル世界では不要物になる。
コントローラーを置き、頬に手を当てた。
「俺は不要物か ───」
先ほどから、トイレに行きたくなっていたのだが我慢していた。
考えがまとまるまで入らないつもりだ。
外国に行くと、トイレも有料である。
清掃スタッフにチップ程度のコインを置いていくのである。
なぜ日本は清掃スタッフを空気のように扱うのだろう。
バーチャル空間で出会ったネット民に尋ねてみた。