魔法のクリエイターと言われる理由、お教えします

人は知る。人は感じる。創作で。

【プロット】「雪と人生の対話」

 雪が舞い散り、静寂に満たされた冬の夜。

 主人公は雪の美しさと対話しながら、自らの人生と物事の裏側に深い認識を求めていく。

 雪が積もる中で、世界が静寂に包まれる様子に心を奪われた。

 一方で、人生は時折の喧噪や戦いが交錯する中で進んでいくことに気づく。

 雪の夜に明かりが灯り、物事が浮き彫りになるように、彼は人生の暗闇の中で見え隠れする光に気づく。

 困難や苦境が新たな可能性を照らし出す瞬間だった。

 春が近づく中、雪が解ける様子とともに、人生においての新たな始まりに向けて歩みを進めることになる。

 雪解けとともに心の中での変化が訪れたのである。

 物事の裏側に潜む真実に気づき、人生においての理解が深まっていく。

 雪のように清らかなものと向き合いながら、彼は内面と対話を重ね、受容の境地に至った。

 雪と人生との共鳴を感じながら、自らの旅路に意味を見出す瞬間が訪れる。

 雪との対話が彼に与えた深い認識が、新たなる一歩への導きとなったのである。

【プロット】「白雪の贈り物」

 雪が降り積もる寒い冬の夜。

 煙る街並みが灯りで染まり、彼は雪の降る夜に窓辺で座り、思いにふけっていた。

 街灯や窓から差し込む暖かな灯りに包まれながら、雪が積もる風景を眺める。

 雪が街を包み込む中で、彼は心の中に温かな感情が広がっていくのを感じた。

 雪の中で過ごした思い出を回想する。

 友人や家族との楽しい雪遊び。

 雪だるまづくり。

 そして笑い声が、彼の心に温かな記憶として刻まれていた。

 雪がもたらす静寂な美しさと、同時にそれが人々をつなぐ特別な瞬間を感じ取る。

 雪がくれたものは単なる風景だけでなく、人と人の絆、温かみ、そして生命の輝きであることに気づいた。

 雪の夜に思いにふけりながら、人生の深淵に触れる。

 雪が積もる中での静かなひとときが、彼に人生観を見つめ直す機会を与える。

 そして雪の下に隠れた希望を見つけた。

 彼の心は雪の美しさと温もりから得た深い洞察によって、新たなる一歩を踏み出す覚悟を抱かせた。

 雪がくれたものは、彼の心の灯になったのである。

【プロット】「不香の天花」

 彼の周囲で香りのない花「不香の天花(ふきょうのてんげ)」が咲く。

 その花弁が雪のように舞い散り、小米雪が積もる中、彼は生きにくさと向き合いながら日々を過ごしていた。

 彼は「不香の天花」の存在に興味を抱き、ここへ来たのだった。

 その花は美しいが香りを持たず、なぜか人々に生きにくさを感じさせるのだった。

 その謎を解き明かそうとする中で、自身の生きにくさにも直面する。

 花弁雪が積もる中、彼が過去の出来事や生きにくさと向き合い続けた。

 花弁雪が彼の心に触れ、過去の傷跡が美しいものへと昇華されていく瞬間だった。

 そして小米雪が舞い散る中で、生きにくさと友達になるような感覚を覚える。

 小さな雪片が彼に優しく語りかけ、生きることの奥深さを示唆した。

 次第に、「不香の天花」と雪が共存する美しい風景が広がっていく。

 生きにくさを受け入れ、その中で花や雪と共に生きることの意味を見出していった。

 「不香の天花」の魔法に触れ、生きにくさが新たな価値となる。

 彼は人生に香りを|纏《まと》い、不香の花の中で輝くことを学ぶのだった。

【プロット】「消えゆく世界」

 どこか寂しげで薄暗い場所に彼は身を置いている。

 その世界は、何かが薄れゆくような感覚に満ちていた。

 影がゆっくりと色を失っていく光景が、彼の目に映る。

 自らの過去に関係ある事柄を徐々に忘れていく。

 記憶が影のように次第に薄れ、彼は過去の出来事や人々とのつながりを失いつつあった。

 彼の住む街もまた、人々の思い出や物語が消えゆく光景に見舞われていた。

 建物や通りは影のような存在に変わり、街全体が記憶の中で淡く輝くだけになった。

 彼は儚い出会いと別れを繰り返す。

 他者との繋がりを求めつつも、それがすぐに薄れていく不可解な現象に困惑します。

 彼は自身の存在が消えゆく理由やその意味を調べ始めた。

 影が増していく中で、彼は何か大切なものが失われつつあることを感じ、その真実に迫っていく。

 そして自らの消えゆく運命に立ち向かいながら、その中で新たな発見や意味を見出す瞬間が訪れる。

 消えゆく影の中にも、何かが生まれていくことを理解したのだった。

【小説】ガラクⅣ 偕老同穴

哀しき空へ

 

 産婆と葬儀屋と、兵隊に失業の心配はない。

 何とも皮肉な話である。

 人は人と憎み合い、殺し合う。

 死の商人である、ハーティ・ホイルは白髪頭を右手で撫でつけた。

 バルセロナ近郊の隔離街ファリーゼで、壮健な老人から手紙を託された時のことを思い出していた。

 銃撃戦がいつ起きてもおかしくない街で暮らし、民家軍事会社(PMC)であるガルーサ社の仕事を請け負ってきた男が、ある夫婦へ宛てた手紙である。

 息子と娘のようなもの、と言っていた届けた先は中東の地獄の激戦区、アルバラ共和国反政府空軍アル・サドン基地である。

 戦いに身を置く人間は、大抵心の底まで|蝕《むしば》まれるものだ。

 シャバに戻れば爆音が恋しくなって戻っていく。

 そして命を散らす日まで戦い抜くのである。

 だがその夫婦は違った。

 娘の幸せを切に願い、世界の平和を信じているのだ。

 強く、哀しい思いを知ってしまったハーティは、彼等を放っては置けなくなった。

 進むも地獄、退くも地獄の砂漠において、迷いは死に直結する。

 だが|類稀《たぐいまれ》な才覚に恵まれた彼等は、自問自答しながら戦い続け、勝ち続けるのだった。

「こんな時、ワインがあれば最高なんだがな」

 満月が砂漠を銀の|絨毯《じゅうたん》に変える。

 ため息をつき、天を仰いで砂を掴んだ。

 世界中を飛び回り、原子力空母でも引っ張って見せた闇の商人は、そろそろ幕引きにしてもいいなどと思い始めていた。

 アルバラの戦争は、クーデターがきっかけだったが、破壊の限りを尽くし王宮を消滅させ目的を見失っていた。

 外人部隊など、ただ大暴れするだけの殺し屋である。

 すでに正義はなく、生き残ろうとする本能を頼りに戦う軍人たち。

 自分自身も武器商人としての本分を全うしようとするのみだった。

「そろそろ、潮時かも知れんな ───」

 大型輸送機のエンジンがかかり、砂煙を上げ始めた。

「おうい、ハーティ爺さん。

 出発できるぞ」

 長い影を砂に落とした老人は、たくさんの武器を積み込み今日も大空へと飛び立つのだった。

銀の砂漠へ

 

 ちょうど同じ頃、地中海を横切ったF-35BライトニングIIはアルバラの目前まで迫っていた。

 低空飛行で気流に注意しながらコントロールしていたせいで、さすがのゼツにも疲れが出始めた。

「ガラク、話がある。

 そろそろ起きろ」

 久しぶりに熟睡した彼女は、コックピットの後部座席で足を踏ん張って胴体だけ反らせた。

「母さん、夜になったのね。

 低いところを飛んでいるのはなぜ」

「良い子は寝かしつける時間だが、悪い子にはこれから仕事が待っている」

「積もる話は後回しってわけね」

「さすが私の子だよ。

 いきなり悪いけど、いざというときにはミサイルを発射してもらわなくちゃならない」

 大きなため息をついたが、狭いコックピットでヘルメットを被っていてはろくに頭も動かせなかった。

「まず質問に答えるが、この戦闘機にはステルス性能がある。

 低空飛行をするとレーダーに引っかからないからだ」

「へえ、高そうな飛行機よね」

 遠くを見ながら吐いて捨てるように言った。

 外の星空とオーバーラップして、高度や姿勢制御に関する数値と無数の目盛りが映っている。

 目を開けただけで、ロマンチックのかけらもない現実に引き戻された。

「これからアルバラという国へ向かう。

 父さんはアル・サドン基地の外人部隊に1年契約で雇われているんだ」

 頭の中で数回|反芻《はんすう》して叩き込んだ。

 情報は時として生死にかかわる。

 嫌でも目つきが鋭くなってしまうのだった。

「よし、これから説明するミッションをよく覚えておきな。

 反政府軍アル・サドンと敵対する、政府軍のパルミラ・サーペント基地へ潜入するために向かっている」

「つまり、父さんの敵方ね。

 話には裏があるんでしょう」

「飲み込みが良くて助かるぜ。

 外人部隊には元々目的がない。

 やる気のないアルバラの正規軍も、反政府正規軍も、金で雇った傭兵に危険な任務を押し付けているのさ」

「何だか、ムカつくね」

「そうこなくっちゃな。

 だから、手を組もうってわけさ。

 外人部隊の連中は気位が高い。

 話せばわかる連中だし、お互いに利害が一致するはずさ」

 少し空を眺めていたが、ガラクは自分の身に降りかかる責任に思い至る。

「それって、戦況を大きく左右するミッションじゃない」

「そうだ。

 戦闘機にロクに乗ってないゼツさんには少々キツい。

 だから万全を期して行きたいんだ。

 まずは脱走兵を装って近づく。

 だからお前は少し手前で射出して下ろそうと思う」

「寒くて熱い砂漠は嫌」

 きっぱりと言い切ったガラクの語気は強かった。

「はあ。

 それなら一緒に両手を上げてお縄に付こうじゃないか」

「もう前科者だし、独房なんか怖くないよ」

 言葉とは裏腹に、どれほどの危険が待っているかは分かっていた。

 だが母と一緒にいる、と思うだけで何とかなると思えるのだった。

山岳基地パルミラ

 

 植物が育ちにくい過酷な乾燥地帯に、切り立った山が連なる。

 風に|晒《さら》され、長年削られてきた山々のシルエットは、人を寄せ付けない鋭いフォルムを描いている。

 まさかこんな場所に滑走路を作ろうなどと、誰が考えたのだろうか。

 若いクリストファー・キンバリーには、どうにも退屈な風景だった。

「よお、王子様。

 試験飛行してもいいとさ」

 ニヤリと笑いながら、クリスが声をかけた。

「ええっ、本当ですか」

 アンニュイな表情を緩め、目を輝かせると幼さが顔を覗かせる。

 成人したばかりの青年は、飛び上がって喜んだ。

「ははは、狭い基地に閉じ込められているから、気持ちは一緒だな。

 俺も飛びたい。

 一緒に行くか」

 金髪を伸び放題にして飾り気のないクリスは、スラリとして|佇《たたず》まいに威厳を感じさせる。

 軍服の襟元を開き、ヘルメットを振り回しながら基地を闊歩する。

 若い頃にクフィルTC2と呼ばれる練習機で、アル・サドンのナセル指令と|鎬《しのぎ》を削ったアルバラ空軍の英雄である。

 現在はパルミラ外人部隊を|統《す》べる司令官であり大佐だった。

 ハンガーと呼ぶ格納庫からエプロンへ出された機体の傍らに電源車がある。

「クリス指令、クフィルは絶好調ですよ」

 パドルを振りながら、誘導員のマーシャラーが声をかけた。

 エンジンは快調に動いていた。

 何機か並べられ、タラップが取り付けられる。

「ふん、どいつもこいつも生き生きしてやがるな」

 ヘルメットを被り、搭乗したクリスは鼻を鳴らした。

 キンバリーも座席に飛び込む。

「それじゃ、行きますか」

「キンバリーは、クフィルに初めて乗るのだったな。

 中東と南アフリカを中心に配備された機体だ。

 デルタ翼機は旋回性能を多少犠牲にして、安定性を重視した機体だ。

 ドッグファイトでは瞬間的にマッハ2.6程度の速度を出せる。

 まずは突っ込み重視でやってみろ」

「わかりました。

 ホーネットに似た操作性だそうですね。

 あとは機体に聞きますよ」

「先に上がれ。

 すぐに旋回して、模擬戦開始だ」

アル・サドンの白い稲妻

 

 空軍の兵士には、個室が与えられている。

 生活リズムを自分で整え、日々身体と精神を鍛えながら疲労を残さない。

 高度な自己管理が求められた。

 特殊な通信機をかけたままにしていたラルフは、シャワーを使いベッドに横たわった。

 基地を10周走ったため、身体は熱を帯びている。

 天井のシミを眺めながら、仮眠を取ろうとしたが目が冴えて眠れない。

 今夜はスクランブルがあるはずだ。

 ガラクがアルバラに来る ───

 時間をかけてゼツと話し合い、出した結論だった。

 不意に、音声が入る。

「今夜は月夜だ。

 一番星もよく見える。

 山も綺麗だ」

 跳ね起きたラルフは、ヘルメットをひったくると廊下を全速力で駆け抜けていった。

 エプロンへ出しておいたホーネットに飛び乗り、ケロシンを流すとアフターバーナーを効かせながら飛び立っていった。

 ゼツからのメッセージは、ガラクと共にパルミラへ向かう、というものだった。

 最悪の事態も考えて戦闘も想定しなくてはならない。

「ナセル指令、ゼツが始めます。

 一番ハードなシナリオです」

 管制塔に上がっていたナセルはホーネットのバーナー炎を眺めていた。

アル・サドンの白い稲妻よ、グッド・ラック」

 着任してから奇跡のような活躍でエースの地位を不動のものにしたラルフは白い稲妻と呼ばれるようになった。

 加速し続けるホーネットの軌跡は、星空に走る稲妻そのものだった。

 ハーティから買ったF/A-18Lホーネットは、電子化が進んだため|操縦桿《そうじゅうかん》を握る時間よりもコンピュータを操作する方が長くなった。

 これも時代の流れである。

 ゼツに買ったライトニングⅡよりも戦闘力をバランスよく強化した機体である。

 小さな主翼は機動性を高め、最大速度はマッハ1.7程度である。

 そして一度に18機を補足して攻撃可能になっていた。

 もちろん、空戦に特化したトムキャットには劣るが、その代わり対地攻撃も高いレベルで対応できる。

 ラルフはアルバラのあらゆる戦況を想定して選んだのだった。

 予想進路から最短でゼツとガラクが乗ったライトニングⅡを目視で捉えることができた。

万事休す

 

 操縦桿を引くと垂直に機体を立ててクフィルの加速性能を確かめた。

 ドッグファイトにおいて、オーバーパフォーマンスかもしれないが、出会い頭に先手を取れれば有利に戦える。

 体中でGの感触を確かめ、キンバリーは歯を食いしばる。

 内臓が締め付けられ、血液が上下に揺さぶられる。

「そろそろ良いか。

 訓練用のレーザー交戦装置を作動しろ」

 クリスの声を聞くと、コンピュータに手を伸ばした。

「一度すれ違ってから戦闘開始だ」

 上を取ったキンバリーは高度計を睨みながらクリスの機体を捉えた。

「さすがだな。

 クセのあるクフィルの特性を理解しているようだ」

 その時である。

 2人のレーダーに近づいてくる敵機が映る。

「むう、間が悪いな。

 勝負はお預けだ」

 反転したクリスは一直線に目標を目指す。

 続いて追ってくる機影が|塊《かたまり》になって映った。

「ちょっと、キンバリー。

 私にも声をかけなさいよ」

 若い女兵士ジェナーが、がなり立てる。

「司令官が演習弾積んで飛ぶなんて、冗談じゃないですよ」

「はあ、人使い荒い基地だね」

「ホワイトたちが出てきたらどうするんですか」

 続くカムス、テイラー、ロドリゴは屈指の腕利きだ。

「お前たち、置いてけぼり食った子どもじゃあるまいし ───

 だが、助かったぞ」

 機影を目視できる距離になった。

 あと2キロほどだろうか。

 1秒ほどですれ違い、一度やり過ごした。

 背中に悪寒が走る。

「何だ、あれは ───」

 凄まじいオーラを|纏《まと》ったホーネットの機影が網膜に焼き付いていた。

「キンバリー、手を出すな。

 全機に告ぐ、上空待機だ」

 この空域で、機影も捉えているはずだが、ピクリとも動かなかった。

ロドリゴ、感じないか」

 クフィルを急上昇させながら、カムスはつぶやいた。

「ああ、手に汗が|滲《にじ》んだぜ」

 暗い声を絞り出す。

「真っ直ぐ飛んでやがるぜ。

 クレイジーなのか」

「ビビってるんじゃないよ。

 あんたたちが行かないなら私がやるよ」

 ジェナーは苛立ちを露わにする。

「指令の命令だ。

 それにお前が|敵《かな》う相手じゃなさそうだ」

後門の龍

 

「ガラク、いるか」

「父さん」

 近距離無線を合わせると、ラルフの声が届いた。

 久しぶりに聞く声は、肚の力を緩めた。

「周り中敵だらけになってしまったな。

 済まなかった。

 やはり無鉄砲なミッションだったか ───」

 暗い声でゼツがつぶやいた。

「何言ってやがる。

 隔離街ファリーゼの教えを忘れたか」

 数秒の間があった。

 もう山岳地帯が目前である。

 遮蔽物はなくなり、ライトニングⅡの機影は丸見えになった。

「絶体絶命のピンチでこそ、一流が試されるんだよね」

 意気込んでガラクが言う。

 レーダーで、クフィルが反転してくるのがわかった。

「母さんは、少し疲れているようだ。

 父さんが何とかするから心配するな」

 操縦桿を目一杯倒しながら出力を上げる。

 バーナー炎を派手に吹き、アルバラに突如現れたスズメバチに活が入った。

 空が少し明るくなり始め、お互いの機影がハッキリと確認できる。

「男たるもの、一代の戦いに身を焦がすなら散り際も華々しくあって欲しいものよ ───」

 透き通った空気が満ちた朝焼けに、緑のグラデーションがかかり始める。

 たくさんの血を吸い込んできた砂漠に、色が戻り始めた。

「ラルフ・ノエル・オリベール、アルバラに散る」

 ミサイルの発射ボタンに親指をかけた。

 安全装置を外し、中央の照準に全神経を集中していく。

 その時、

「待て待て待て」

 まくし立てる高音の声がヘルメットに響いた。

アル・サドン見参だ、この野郎」

「ちょっと品がないぞ、ホワイト」

 アリーがため息交じりにたしなめた。

「私は、ファイズ・ハーン・アリ―大尉だ。

 アルバラ共和国政府空軍パルミラ・サーペント基地総司令クリスティ・ドゥイ・ブロトンに告ぐ。

 アル・サドンのナンバー1からナンバー3までを揃えた。

 合同演習を申し入れる。

 直ちに回答されたし」

 アリーの堅い声が無線に響いた。

「とかよ、おい ───」

 カムスのため息に、ジェナーが降りていく。

「もういいだろう。

 私も暴れたくなったよ」

ファイズ・ハーン・アリ―大尉、クリスティ・ドゥイ・ブロトン大佐だ。

 我々外人部隊には、国境も理念も関係ない。

 金で雇われた戦争屋であり、誇りを糧に戦う同志だ。

 アル・サドン基地の噂はかねがね伝え聞いている。

 上位3名がお揃いとあれば、願ってもない。

 是非お手合わせ願おう。

 全機、演習用レーザー交戦装置に切りかえろ」

 ライトニングⅡの座席にもたれていたゼツは、大きく息を吐いた。

 高度を上げ、空に目をやる。

 太陽が顔を覗かせ始めた砂漠は、少しずつ熱を帯び始めていた。

「陽はまた昇る。

 胸に誇りの火がある限り」

 ガラクも太陽に目をやった。

 眩しさに目を細め、遠く山々の峰を謎っていった。

 空に上がった狼が、己の存在を確かめるように駆け巡る。

 右手をコンピュータに伸ばして、演習用レーザーに切り替え操縦桿を握り直した。

あざれる砂漠

 

 産まれて初めて操縦桿をしっかりと握ったガラクは、軽く倒しながら身体の感触を確かめた。

 最新鋭のF-35BライトニングⅡは、わずかな動きも逃さず挙動に反映していく。

 半分コンピュータ制御にしているため、極端に乱れることはなく初心者でもある程度はサマになった。

「ガラク、お手柔らかに頼むよ。

 コックピットはゲームみたいなものだが、本物の戦場だぞ」

「分かってるわ」

 思いがけず戦闘機の操縦を体験できることになった。

 中東の雰囲気に慣れていないガラクは、甘く見ていた。

 演習とは言え、飢えた狼と化した者たちに近づくには不用意過ぎたのだ。

「おい、変なのが混ざってるぞ」

 ふらつきながら近づいてくるライトニングⅡをキンバリーが捉えた。

 レーザーを発射しながらすれ違う。

 コックピットにけたたましく警報が響く。

 接近による警報、着弾の警報、レーダーに捉えられた警報。後ろを取られた警報。

「おい、危ないから大人しくしてろ。

 邪魔するなら撃墜する」

 無線に冷たい声が入ってくる。

「彼の言う通りにしろ、ガラク

 戦闘機をまともに乗りこなすには、何百時間も必要なんだ。

 父さんみたいに乗りこなすのは無理だ」

 少々声を荒げてゼツがたしなめる。

 広い青空を自由に飛び回る戦闘機が、遠く手の届かない世界にいるのだと悟った。

 自動操縦に切り替え、高度を上げていく。

 低空飛行を続けたせいで、燃料が残り少なくなっていた。

「よし、そろそろいいだろう。

 引き上げるぞ。

 アル・サドンの諸君にも、燃料を提供しよう。

 残り少ない者は一緒に降りて来い」

 警戒を解いたわけではないが、クリスの言葉にはアルバラの戦況が表れていた。

 外人部隊は、正規軍から切り離されていて独自の作戦を展開する段階に来ていた。

 つまり、いつ切り離されてもおかしくないし、金食い虫のお荷物になりつつあるのだ。

「ライトニングⅡはお言葉に甘えさせてもらえ。

 我々はお気持ちだけ受け取っておく」

 アリーが言った。

 アル・サドンから来た3機は、大きく旋回した。

 その後ホーネットが離脱してついてくる。

「俺もつき合う。

 戦場では何が起こるかわからないからな」

再会、そして

 

 山岳地帯は気流の乱れが激しくて、離着陸が難しくなる。

 それ以前に平らな大地がないから滑走路を作るには適さない。

 だが、戦闘機の扱いに慣れた者ならば、守りに適した天然の要塞になり得るのである。

タッチダウンのポイントがシビアだから、コンピュータに任せるといい」

 最新鋭のライトニングⅡは、ほぼ自動で離着陸できる。

 練習のため、などと言っていられない難易度だから仕方がなかった。

 ラルフの言う通り自動操縦で難なく着陸すると、ホーネットも続いてきた。

「ガラク

 コックピットから出るとすぐに親子は吸い寄せられるように再会を喜んだ。

「済まなかった。

 父さんと母さんは間違えていた。

 |上辺《うわべ》だけの平穏を、お前に与えようとしていたのだ」

 父親は、娘を抱きしめて悔やんだ。

 立場上、敵方の兵士だから外で待機してラルフは給油だけ受けるつもりだった。

 その間、ガラクと今までの経緯を話して今後のことを考えた。

「ガルーサ社の社員として、父さんと母さんは世界のバランスを保つために戦ってきたのだ。

 これからはガラクも加わるということだな」

 民間軍事会社は、軍事的な後方支援やコンサルティングで社会に貢献するという建て前がある。

 これからは直接的な戦闘よりも比重が高くなるはずである。

 限られた時間で、3人の親子は喋りつづけてから再会を誓ったのだった。

「ゼツ、わかっているな」

 母は時々ベレッタに手をやり背後に殺気を送っていた。

 ガラクも時折視線を感じていた。

 目くばせだけをして、ラルフはホーネットに再び搭乗する。

「ゼツ、ガラク

 家族は人生最初の友であり、最後の支えだ。

 無事に再会できると信じているぞ。

 グッド・ラック」

 戦場でよく使われる「グッド・ラック」は「幸運を祈る」という意味である。

 戦友同志であれば、これほど心休まる言葉はない。

 愛や情よりも深く、絶妙な距離感で相手を|労《いた》わる言葉である。

 給油を終え、エプロンに収めたライトニングⅡを背に砂漠に向かって2人は歩いて行った。

「さてと、この辺でいいだろう」

 銃声がしたと同時に身を伏せたゼツは、ベレッタを構えていた。

 ガラクもベレッタを抜いた。

「何者だ」

 浅黒く、豊かな|髭《ひげ》を蓄えた大柄な男が物陰から出てきた。

 赤黒い液体が流れる手を押さえながら。

「その手では、もう銃を扱えないだろう。

 手当を受けたら去れ。

 もう一度私たちの前に現れたら、今度は左胸に穴をあけてやる。

 正規軍がよこしたスパイ狩りってところか」

 男は呻くのみで答えなかった。

「さてと、ガラク

 ここからが正念場だぞ」

 目くばせをすると、クリスが待つ管制塔へと向かった。

 砂漠の砂を、|山間《やまあい》の風が巻き上げ滑走路に積み上げていく。

 耳を突く風の音に混ざって、時々石を打ち付ける音が混ざる。

 生き物が育たない乾ききった風景は、この世界の生きにくさを象徴するかのようだった。

 

 

この物語はフィクションです