2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧
碧い風景 沖の入道雲は、生き物のように上へ上へと伸びていく。 人間のスケールを遥かに超えた造形である。 夏の午後、よくある空模様。 モクモクと内側から張り出してくる白い綿が、やわらかいフォルムを見せる。 空は抜けるような深さである。 身体を反ら…
生まれ出た若者 春の陽射しが温かい。 河原には草花が咲き乱れ、蝶がヒラヒラと舞う。 空にはふわふわと薄雲が浮かび、薄水色の空が広がる。 |根村 道翔《ねむら ゆきと》はキョロキョロと周りを見回し、足元の花を一本一本確かめる。 道路を触ったり、白線…
ランキング参加中創作家達の集いの場 「俺は、刑事失格だ」 右手を振り上げ、強く握りしめた。 腹の中心に拳をめり込ませる。 左手を開き、頬を叩いた。 恐怖に歪む顔。 殺人現場で何度も気を失う弱さ。 顔を引きしめ、奥歯を嚙みしめた。 ひーっひっひっひ…
ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち 木製のアンティークの箱が足元にそっと置かれていた。 リサイクルショップを物色していた俺は、不用意にも軽く蹴ってしまう。 奥に座っていた黒ブラウスを着たおばさんの視線が刺さった。 「いけね」 心で舌打ちし、なおも…
久しぶりに故郷に帰って来た私は、島の入口にあるホテルを予約していた。 東京の大学へ行ってから、 「ときどき会いにくるよ」 と言ったきり、忙しさにかまけて疎遠になっていた。 雄吾は高校時代と同じ、島の男という雰囲気を醸し出す。 「やあ。 久しぶり…
ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち ここは市内最大級の総合病院。 毎日救急患者が搬送されてくる。 事故、病気。 血まみれで息絶え絶えの患者が今日も運ばれてくる。 「酸素飽和度幾つだ、ヘマトクリット何単位だ」 叫び声のように指示が飛ぶ。 ストレッチャ…
ランキング参加中創作 海底には地上にはない神秘がある。 科学が大好きな私は、高校のスーパーサイエンスハイスクールというプロジェクトで海底基地に来ていた。 国を挙げて海底探査を本格的に始めたときにできた基地。 まだまだ未知の生物、鉱物資源が研究…
ランキング参加中雑記 東京湾に突如現れた巨大な生命体。 まさか、SFの世界のようなできごとが起こるなんて。 私は開発途中の巨大ロボットに乗り込み、地上へと射出された。 家には小学校2年生の男の子と小学校1年生の女の子、幼稚園に入ったばかりの女の…
ランキング参加中小説 novels 沼地の生物は、独自の生態系をつくっている。 特に微生物の世界を見ていると、人間に荒らされていない沼ではとても面白い。 昨日はアメーバの動きを見るために何時間も顕微鏡を覗いていた。 私が書いたスケッチは膨大な数になり…
ランキング参加中ブログで小説書いちゃいましょう! 消費者契約法が施行されてからかなり経つが、マルチ商法の被害は依然として多い。 経済誌でそんな記事を読んだ。 化粧品や健康食品、給湯器など商材はさまざまだが、なぜなくならないのか。 私は経営者と…
ランキング参加中小説家 ヨーロッパから帰ったばかりの尼木は、デパ地下を物色して愚痴をこぼす。 「日本の食文化って、乱れてるよねえ」 甘いもの、辛いもの、しょっぱいもの。 味が強すぎて素材が死んでいる。 試食を口に運んでは吐き出して顔を|顰《しか…
ランキング参加中創作家達の集いの場 マルボウは肩身が狭くなったと言われている。 シノギがやりにくくなったし、まともに不動産も借りられない。 服にだけは金をかけ、食い物はフードコートでB級グルメ。 人間は外見を気にするものだ。 高いスポーツカーに…
ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち 研究者を名乗っていても、収入が少ない俺は、ネットカフェに来ていた。 大学教授の椅子は限られている。 何年も時間講師を続けているが、少ない枠を取り合いするばかりで先が見えない。 どうせ研究などしても、売れない本…
ランキング参加中創作 下町には、人情を感じるスポットが残っている。 銭湯もその一つだ。 自宅に風呂がない家庭など、今ではほとんどないはずだが、なかなか繁盛しているようである。 狙撃手としてアフリカ、南米の外人部隊を経験した俺はコロシも請け負う…