秘書の仕事は下働きである。
スケジュール管理と、書類作成はまだいいが、お茶くみ掃除も含まれる。
性格的に向いているかどうかが、問われる仕事である。
留依は、ため息をついた。
「私、絶対向いてない ───」
大会社の役員秘書になったものの、毎日葛藤が消えない。
同僚に愚痴をこぼすこともあるが、留依は成功者とみなされていた。
噂話が聞こえることもあった。
「結婚でもすれば、変わるだろう」
苛々した態度を見せることもあった留依の悩みを、真剣に聞いてくれる人はいない。
マンションに帰ると孤独にさいなまれ、どうにかなりそうになる。
ある週末、苛々をかかえたままスキー場へ行った。
思いっきり滑りたい。
そう思っていたが、声をかけてきた男がいた……