裏道を縫うように走り続けるタクシーの中で、今日もハンドルを握る俺は宇宙に心を馳せていた。
身を焦がすような恋心を抱えたまま、長い間彷徨ってきた。
30過ぎの男には、結婚の二文字がちらつく。
故郷からは早く帰ってきて身を固めろと言ってくる。
タクシー運転手など、どこでもできる仕事だ。
車を運転して客をもてなせばいいだけだ。
大した仕事でもない。
だからこそ、自分のあり方を考えてしまう。
宇宙へ行けたら ───
あの人と一緒に360度の星空を眺めるだけでいい。
最近は有給休暇を消化しないと会社がうるさく言ってくる。
俺はフロリダ行きのチケットを押さえた。
ケネディ宇宙センターに新しくできたという垂直打ち上げ体験アトラクションに参加することにしたのだ。