広大な牧場で乳牛を育てている宮部は、年々厳しくなる経営に苦しんでいた。
銀行からの融資額が膨らむ一方で、工夫を重ねてきたものの行き詰まりを感じる。
だが、いかなる時も冷静に時代を分析する宮部は、ついに打開策を思いついた。
小規模な顧客をターゲットにして、カスタマイズした乳製品を提供するのである。
最近は成分を調整しても真新しさはないが、顧客からの細かい要求に応え、発達した物流に乗せてすぐに届けるシステムをSNSを活用して作るのだ。
銀行に相談すると、宮部の企画書を見て唸り、すぐに融資が決まった。
他の業種では珍しくなかったが、大規模な酪農家がきめ細かくニーズに応える発想に可能性を感じたようである。
コンピュータとロボットに資金を投入し、一頭ごとにエサ、睡眠、運動など飼育のすべてを徹底して管理する。
ビジネスは軌道に乗った。
だが、そんな中社員から批判の声が上がり始める。
ベテラン酪農家からすれば、牛の気持ちを無視していると捉えたようだった。