看護師志望の如月は、自分の運命を呪っていた。
看護学校を卒業間際になっても、感染症は収まるところを知らず増え続けている。
戦後最悪と言われるほど深刻なパンデミックに見舞われ、医療現場は混乱していた。
医療従事者は明日をも知れぬ戦場に駆り出される兵士のようなものである。
「医は仁術なり、と言います。
世間では病院を忌み嫌っていますが、私はこの仕事に誇りを持っています」
「はい。
私も看護師を志した自分自身に誇りを持っています。
ぜひ医療現場で、微力を尽くしたいです」
口から出まかせだった。
後悔しているなどと、誰が言えるだろうか。
きっと面接官も少なからず後悔しているだろう。
3メートル以上離れた違和感ある面接会場で、マスクとフェイスシールドをつけて話す。
だいたい、マスクはほとんどの空気が周りから出入りする。
99パーセントウイルスをカットするなどと誇大広告を打っている。
フェイスシールドに至っては、ほとんど効果がないというデータが隠蔽された。
「現場では、先生もマスク一つで奮闘されています。
でも患者さんに不安感を与えないために、看護師は身につけるのです」
ハッとした。
心を読めるのか、と心の中で呟いていた。