ギャンブル好きで、ついのめり込んでしまう佐々木は借金に苦しんでいた。
派遣社員として働きながら、少しずつ返済していたがまた更新が打ち切られ無職になってしまう。
何度も借りているため、ついに借りるあてがなくなってしまった。
今日も借金取りがやってきて、玄関口で大声を出す。
「おい!
いるのはわかってるんだ!
出てこねえとドアを蹴破るぞ」
ついにヤクザが本気をだした。
秘密裏に行われているデスゲームに参加して、生き残ったら借金をチャラにするという。
受ける以外に選択肢はなかった。
地上20階のビルの上にロープが張られ、そこを渡るのである。
「まだ死にたくねえ」
隣に座っている中年太りの男が情けない声を上げて震えていた。
生来のギャンブラーである佐々木は、なぜか落ち着いていた。
要するに、これも賭けである。
死ななければ勝ちなのだ。
しがみついてでも渡り切ればいい。
観衆も、哀れな人間を見て喜ぶようなゲス野郎なのだ。
佐々木は真言密教の札を取りだした。
「リンピョウトウシャ……」
自分の身体には、超常の力が備わっている。
一時負けても、最後には勝つ。
確信があった。