流行りの髪型をネットで研究していた美容師のアキラは、今日もお客さんに尋ねた。
「どんな髪型にしますか」
「は?」
お客さんは、何を言っているのか、といった返事をした。
少し沈黙した。
正直アキラはイラっとした。
腕には自信があるし、そこそこ名が通った店である。
俺のやり方に文句あるのか。
そんな安っぽいプライドが頭をもたげる。
「ご希望があれば、言ってください。
タレントさんとか、スポーツ選手の名前でもいいです」
「だから、ここは美容院でしょ。
俺が決めることじゃないよ」
好きにやれということらしい。
「それでは、お任せでよろしいですね」
「違うよ」
お客さんは、苛立っている様子だった。
どうしたら良いのか分からなくなった。
希望を言わないし、お任せでもない。
中間はないはずだけど……
「あんたのスタンスを聞いてるんだよ」
ビシッと言ってのけた。
「お客さんは、しっかりした顔立ちをしていて肌はピンクがかった敏感肌で……」
「違う!
だから、あんたのマインドが欲しいわけ」
アキラは黙って雑誌のページを指さした。
「これにします。
黙ってプロの仕事を見ててください」