足元に地図のような街が広がる屋上に、俺は立っていた。
体育教師になってから、毎日簡単な体操とスポーツの基本を教える毎日が続く。
テニスで日本屈指の強豪になり、毎日練習漬けの生活を続けた。
そして故障を理由に引退。
目立った怪我もなく、選手生命を全うして第一線で活躍する練習量を維持できなくなったため、古傷の膝の違和感を理由にしただけだった。
赴任した高校で教壇に立つと、生徒の視線に足がすくんだ。
子どもたちのまっすぐな目が心を射抜く。
テニスで完全燃焼してからは、何を目標にすればいいのか分からなくなった。
生徒たちのエネルギーには人の心を|抉《えぐ》る強さがある。
俺は心底怯えた。
人生の目標を持たないオジサンでしかない自分が、みすぼらしかった。