袈裟に身を固めた除霊師は、コスプレ会場では風景のように馴染んでいた。
真言密教のマントラを唱えて見せると、何を勘違いしたのかスマホを向けて撮影会が始まった。
|懐《ふところ》から|独鈷杵《どっこしょ》を取り出し、錫杖を持ち上げる。
シャン、と金属の輪が音を立て、振り下ろした錫杖の先に視線を合わせる。
膝を折り地面に独鈷杵を突き立て、
「オーン」
と目を閉じて難しい顔をして見せた。
人がどんどん集まってくる。
何かパフォーマンスをしている、と思っているのだろうか。
俺は本物の除霊師だ。
悪霊を祓うためにやってきた。
だが、依頼人に言われたターゲットが見つからない。
人間は、大なり小なり霊感を持っている。
プロが見れば、守護霊を見抜くのは簡単である。
遊び半分で人寄せのパフォーマンスをしていると、背筋をゾクリとさせる巨大な霊気が駆け抜けた。
「まずい、鬼門が開いている」
この状況では、まともに聞いてもらえそうもなかった。
仕方なく、渾身の霊力を独鈷杵に込める。
常人にも分かるほどの光を全身に帯びて、同心の円形に気が満ちてい