仕事帰りに歩く路上で、いつも描くのは、家族の顔である。
毎日同じような生活パターンなので、家で何をしているかは想像がつく。
家路につくと、自分が結構疲れていることに気づく。
だが、道路に出てしまえば、急に電話がかかってきて3秒で取る必要もない。
ふう、と一息つくと、みぞおちの辺りがゆるんで脱力するのがわかる。
電車通勤をしていた時には、周りからの刺激が実に多かった。
通勤電車には、毎日同じ人が乗っているものだ。
名前は知らないが、
「あの人またいるな…… 」
と思う。
満員電車でぶつかったり、靴を踏んで怒られたり、自分がやられて怒ったりした人の顔はよく覚えている。
だからといって何もない。
転勤するときには、ふと、そんな人たちのことを名残惜しく思ったものだった。