郵便配達をしていると、手紙の中身がなんとなく分かるものである。
例えばハートのシールが貼ってあると、恋人に送るラブレターである。
どんな恥ずかし台詞を書いてあるのか、つい想像してしまう。
あからさまなラブレターを送る先は、独り暮らしと相場は決まっている。
普段からたくさん手紙が来たり、「先生」と宛名に添えてあれば地元の名士である。
家の大きさからもすぐにわかる。
毎日配っていれば、どの家にどんな人がいるか頭に入ってしまい、住所を書き忘れた手紙があっても届けることができた。
そんなある日、担当している地区に好きな人ができた。
彼女が家から出てきて、手紙を手渡したとき
「ちょっと待ってて」
と言い栄養ドリンクを差し入れてくれた。
その時の輝く笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。
毎晩彼女の夢を見、また逢えないかと毎日家を覗いた。
もしラブレターが届いたら粉々に破り、コンロで焼き捨ててやる。
彼女は俺だけのものだ。
郵便物の送り主を追いかけているうちに、通っている学校も交友関係もわかってきた。
そして今日、彼女と同じ満員電車に飛び乗り後をつけてきたのだ。