ぼくは幼稚園が嫌いだ。
ママもパパも仕事でほとんど家にいないから、朝は一人で行くし、帰りも一人で帰る。
みんなお迎えを待って、嬉しそうにママと手をつないで帰っているのに。
家に帰ると、ポストの裏に隠した鍵を持って中に入る。
流し台によじ登り、お皿を洗ってご飯を研いで電子ジャーのタイマーをかける。
着替えをしてテレビのスイッチを入れ、お菓子を食べる。
いつも同じ順番でやっている。
ぼくって忘れっぽいから、全部決めてるんだ。
もうそろそろかな。
ドアのチャイムが鳴った。
「内野食堂です。
おまちどうさま」
ラーメン屋のおじさんが、ラーメンを一つ持って来てくれた。
ぼく一人しかいないから、何となく申し訳ない。
お金を払って「ありがとう」を言った。
にっこり笑顔を返してくれた。
明日は、映画館というところへ行く。
大好きなアニメをやっているらしい。
一人でチャレンジだ。
映画館にはママと一緒の子どもばかり。
走り回ったり、ポップコーンを食い散らかしたり。
ぼくは何やっても怒られないけど、張り合いがないからいい子に座っていた。