私が6歳の時、母は家を出て行った。
酒浸りの父と、毎晩のように口論をして顔に|痣《あざ》を作る日もあった。
幼かった私も、兄弟も黙って怯えていた。
ろくに仕事をしない父のせいで、食べる物も着る物も事欠く始末。
家事を兄弟で分担し、母がいつ帰ってきてもいいように家をきれいに掃除して食事を用意した。
私も高校生になり、3度目の文化祭が始まった。
軽音楽部でギターを担当した私はステージの上で準備していた。
4人でバンドを組むが、まともに練習しないメンバーに|苛々《いらいら》しながらも本番を迎える。
今日が高校最後の演奏である。
家事の合間にギターを弾く時間が自分を何度も奮い立たせた。
エレキギターの大音響は魂を振るわせ、肉体をエネルギーの固まりに変える。
そして、音楽には夢がある。
自分の曲を世の中に出したい。
純粋な気持ちをステージにぶつけた。