幼い頃から病弱だった私は、よく一人で遊んでいた。
本が好きで、家の本棚には全集物やミステリーなどがずらりと並んでいる。
小学校3年生のときに小説を書き始める。
執筆に集中するために地下室へ籠るようになった。
窓がなくて薄暗い室内は、静けさという贅沢な空間だった。
生きていると、周りで何かしらの音がする。
人の声、虫や鳥の声、木々のざわめき。
朝早く起きて机に向かうとき、周囲の静けさに驚くことがある。
そんな静けさが一日中、地下室にはあった。
私の小説は、全然上手くいかなかったけど好きだから書き続けた。
身体が弱くて外で思いっきり遊べない現実から逃れる術だった。
高校生の時、初めて小説が認められ大手出版社から商業出版された。
徐々に名前が知られるようになって、大きな省にもノミネートされるようになる。
小説は私にとって大空を羽ばたく手段だった。